黄昏の碑文発売

.hack//黄昏の碑文 I (角川スニーカー文庫)

.hack//黄昏の碑文 I (角川スニーカー文庫)

.hack//黄昏の碑文  II (角川スニーカー文庫)

.hack//黄昏の碑文 II (角川スニーカー文庫)

「黄昏の碑文」にピンとこない.hackersはいないでしょう! 小説で出ました。
Amazonレビューにリンクでも…と思ってたんですが、レビューが思いのほか
長文になってしまったので、こちらにそのまま載せようかと思います(汗



はじめに書きますが、.hackを知っている人にはどうしても
このレビューはネタバレになってしまいます。
そして、.hackを知らない人には、ゲーム(4部作)等をやってから
読んで頂きたい作品ですね。オイシイですから。
というわけで、ネタバレ御免で進めさせて頂きます。



主人公の名はララ・ヒューイック。
ネットで話題の「黄昏の碑文」に興味を持つ14歳。


叔父の家に遊びに行った折、偶然開発中のゲームを見て
「黄昏の碑文」と通ずるものを感じ、遊び心でログイン。


まるで本物のようなゲーム世界の「感触」を感じるが
何も知らない彼女は純粋に感動する。
『ハロルド叔父さんはすごい人だったんだわ。』


そのゲームの名は…フラグメント。



というわけで、.hackを知っている人には
こんなに興味をそそる話も無いだろうという設定から始まります。
「世界」に取り込まれたハロルド・ヒューイックの姪は
未完の黄昏の碑文をどう完成させるのか?がテーマです。
登場するキャラ達も、ゲーム視点から言うと放浪AI達なのでしょうが
それを感じさせない、まるで本物の碑文の中の人物達のようです。


ストーリー的には、あの.hackの雰囲気を作り出すために考えられた物語だけあって、
途中は救いの無さが際立ち、読んでいて辛くなる部分もあります。が、最後は…。
プログラムではないサヤが、世界の中でどう動くか。ご自分の目で是非どうぞ。


以下は、


各章タイトル
本編ゲーム中の碑文の断片について(関わると思われるものをピックアップ)
それに関するコメント


ということでまとめて、レビューのかわりとさせて頂きます。
ちなみに、前4部作のみプレイされた方、
「隠されし 禁断の 聖域」=グリーマ・レーヴ大聖堂 です。
G.U.でしか出てこない名前なので、書いてみました^^




01.Can't back real home -消えた帰り道-
「麦畑に背を向けて影持つ娘のつぶやきける
“きっと、きっと帰るゆえ”」の碑文です。
「彼女らの地の常しえに喪われしを」と続きます。
(本編プレイヤーさんも聞き覚えの無い『影が無い六本の脚を持つ雄鹿』
 とかは出ますが、他はまさに碑文の始まりを感じさせてくれるスタートです。)


02.imbroglio -誤解-
「七姉妹のプレアド、人に恋せしゆえに、
 影持つ身となり、ダックを追放さる。」を彷彿とさせます
(実はこの断片、本当に関わるのはepisode04です。ですが、
 名前も「誤解」の理由も違いますが、闇を追放された娘と会います。
 その後出てくる別の「影持つ者」、野生的な大男で、
 一瞬「人語を解する猿」かと思ってしまいました^^;)


03.amnesia -記憶喪失-
「八相」を表現した碑文が出ます。
(アペイロンの読む文献に、そのままの文章が。
 ストーリー自体はこれとあまり関わらず、
 ドッペルゲンガー・コシュタバウアなど、G.U.ファンが
 ピンとくるキーワードも多いです。)


04.raid -侵略・奇襲-
「堕ちたるプレアド…アルケ・ハオカーに隠栖す。
 …プレアドの姿消え、波の先駆け来たる。」
(02に載せたのと同じ断片です。ただしここで出てくるのは元「光」。
 G.U.ネタとしてはエルディ・ルーが出ます。
 ララ・ヒューイックのPC=サヤが「カワリダネ」と呼ばれるので
 本来の夕暮れ竜探索パーティはもしかして、
 影を持つ「ヒト」「光の精霊」「闇の精霊」の3人だった…?と思ったり。)


このあと、episodeReal.At the time が続きます。



そして最後になりますが、冒頭〜ヘルバとアペイロンの会談にあたる断片に
ついて載せまして、前編の締めとさせて頂きます。


Fragment -プロローグ-
「夕暮竜を求めて旅立ちし影持つ者、未だ帰らず
 ダックの竈(かまど)鳴動し
 闇(ダック)の女王ヘルバ、ついに挙兵す
 光(リョース)の王アペイロン、呼応して
 両者、虹のたもとにまみゆ
 共に戦うは忌まわしき“波”
 アルバの湖煮え立ち
 リョースの大樹、倒る
 すべての力、アルケ・ケルンの神殿に滴となり
 影を持たざるものの世、虚無に帰す
 夕暮竜を求めて旅立ちし影持つ者、永久に帰らず」


後編の碑文の引用部分では、アペイロンとヘルバの挙兵の辺りも描かれています。
…ララ・ヒューイックはどうなってしまうのでしょうか。
以下は後編です。




05.discord -不調和-
ここでも「八相」を表現した碑文が出ます。
碑文の引用部分ではなく本編で…
(前編でも出た碑文の繰り返しになりますが…ここでは一行がイニス(とメイガス?)を見ます。
 波「スケィス」により壊された街が「惑乱の蜃気楼」で一見復活したかのように見えた後…。
 新たな波の襲来を予感した一行はここで逃げますが。
 前編では波の襲った場所は壊された時点(スケィス襲来時点)で、その場に居る精霊達は
 逃げたりしていたのですが、もしかしてどの場所にも八相全てが来ていたのかもですね。
 「再誕」コルベニクによりその場所がどうなったのか気になるところです。
 ラストにも絡む部分ですね。…まぁ前編、スケィスしか出なかったのかもですが(笑
 無印.hackも1巻はスケィス出ずっぱりでしたしね^^;)


06.lost -消失-
「指が月を示しとき、愚かなる者、指先を見ん」
(この碑文、直で関わるところは恐らく前後編のどこにもありません。
 ですが、目の前の波と戦い続ける登場人物達を表しているようにも思いますし
 碑文にとっては異分子ですが、サヤ(ララ)も記憶の混乱からこの状態になっています。
 ので、載せてみました。この章は語ると重大なネタバレがあるので
 これで感想にかえさせて頂きます。…挿絵でネタバレてますけどね^^;
 キーワードとしては、エルド・スレイカ(G.U.のケルヌンノスの居城)が出ます。)


07.merge -同化-
「人語を解する猿」との問答を連想させる、巨人族モケイン(ケルヌンノスの一族?)の王と、
影持つ者のエルド・スレイカでの問答、というシーンです。
ただ、引用碑文はこれ、竜骨山脈での問答という設定なのでこの話ではないのかも知れません;
竜骨山脈はひとつ先の章ですがこの話無かったのでここで;
(問答の内容は、サヤが本来の人格ではないので恐らく碑文とは異なるはずです。)


08.riddle -謎かけ-
サインを意味する者シェラタンからの謎かけです。
「誰の目にも等しくありながら、誰一人として、其をとらえること叶わず
 其、とは何か?」
(ゲームに出てきた碑文にあったか不明ですが、「3人の影持つ呪紋使い」の覚醒終了、という話。
 トンネルを抜けると銀世界、とか、時間が無いと謎かけの答えを考えたら
 答えがわかったり、揺れる半島が実は…等、どこかで見た表現がちらほらです。
 碑文はザ・ワールドの中では真実、でも現実で書かれた叙事詩にすぎないと
 実感させられる部分だったりしました。また、竜骨山脈の名付け親についてなど、
 最終章につながる描写も出てくる重要な章になっています。
 …伝説になる、ということは、夕暮れ竜もこの世界を伝説で救えると
 信じていた時期があったのでしょうね。そうでなければ残らないはず。)


09.Twilight Dragon -夕暮れ竜-
「せめて波涛のひとつもあれば一矢報いんものを
「系の変更にあらず、個の変化なりしかと」
等、様々な碑文が出てくる最終章です。
(夕暮れ竜と出会い、思惑を語られる、フラグメント内のエンディングの章。
 これについての感想はまとめて以下に。)


"The World" -エピローグ-
ここは感想のみで。現実の締めくくりが書かれている章、ここから.hackに続きます。
未帰還者としてちび魔女サヤの身体に入り込んだララ・ヒューイックの意識が
新たな物語を作った、ということは、ハロルドは最初から
未帰還者というものも織り込み済みでプログラムしたのでしょう。…凄いなぁ。
自分が本編でああなることを予測していたかはわかりませんが、
姪で試用したということは、少なくともフラグメントの時点から
碑文と同化したい、とは、考えていたような気がしますね。
> かくて、波の背に残るは虚無のみ
> 虚ろなる闇の奥よりコルペニク来(きた)るとなむ
> されば波とても、そが先駆けなるか
で示されるように。本編と同じく、死と新生(エヴァか)、もとい再生のための死、が
テーマという結論ですね、碑文は。波は一度0に還す手段にすぎない、と。
ザ・ワールドのPC達にクリア目標が無いのもきっと…。
薄明の物語・黄昏の碑文は、未完ではなく、完成しない、果てしない物語だったんですね。